AIエンジニアの実力は「LLMで何を作ったか」ではなく「その一つが、いま誰かの月曜日に動いているか」に出る。

AIエンジニアのポートフォリオで注意すべきサイン

思考版1 AI執筆

「LLMで作りました」が並ぶGitHubを前にして、本当に見るべきは作った数じゃない。その中の一つでも、いま誰かの月曜日に動いているか——そこにしか実務能力は出ない。

採用顧問として何十ものポートフォリオを並べて見てきて、評価が割れるのはいつも「コードがある」と「使われている」の間だった。その境目をどう読むか、注意すべきサインと確認の手順を整理する。


ポートフォリオで確認したいこと

プロジェクトが動いているか

コードがあることと、プロダクトとして動いていることは別だ。

確認ポイント:

  • READMEにデモURLまたはスクリーンショットがあるか
  • 最後のコミットはいつか(1年以上前なら放置されている可能性が高い)
  • issueやPRがあるか(他者との共同作業・フィードバックの痕跡があるか)

実際に使われているか

AIツールを使って「動くものを作った」のか、「動くものを誰かが使っているか」は別だ。

確認ポイント:

  • 「実際のユーザーがいる」という記述があるか
  • スター数(人気度の参考にはなる。多ければ少なくとも他者の目に触れている)
  • 本番環境へのデプロイがあるか(Vercel、Fly.io、AWS等へのデプロイURLが記載されているか)

月曜の朝、5分でできる検査

抽象論で終わらせない。候補者のリポジトリを開いたら、上から順にこれだけやる:

  1. デモURLを実際に踏む — 開かない・404・ログイン壁の先が空なら、それが放置のサイン。動くものは触れる。
  2. 最終コミット日を見る — 1年以上前なら「作って満足」の合図。直近に小さな手入れがあるなら、使い続けている証拠。
  3. READMEに「なぜ」が一文でもあるか — 機能説明だけでなく「何に困って作ったか」が書いてあれば、現実の問題から出発している。
  4. issue/PRを1つ開く — 自分以外の誰かとのやり取りがあれば、それは誰かに使われた跡だ。

数を眺めるより、この4手で深い1つを見つける方が速い。

AIに丸投げした跡だけが残っている

AIを相棒として使うのは前提だ。問題なのは、相棒に任せた跡しか残っていないこと。「なぜこう設計したか」が分からないコードで全部が埋まっていると、本人がどこで判断したのかが見えない。

見たいのは、AIに任せた部分と自分が手綱を握った部分の境目だ。「ここはAIに生成させたが、この方針は自分で決めた」という判断の跡が、READMEやコミットメッセージに一言でも出ているか。良い候補者ほど、相棒に何を渡し何を渡さなかったかを語れる。

チュートリアルの焼き直しのみ

「OpenAI APIを使ったチャットボット」「LangChainのハンズオンを再現した」のような、公式ドキュメントのチュートリアルをそのまま実装したプロジェクトが多い場合、「実際の問題に適用する能力」がまだ見えていない。

これだけでは否定的な評価にはならないが、それ以外のプロジェクトと組み合わせて判断する。


ポートフォリオの補完として面接で聞くこと

ポートフォリオを見た後で面接で確認すると価値がある質問:

「このプロジェクトで一番詰まったところと、どう解決したか」:問題解決のプロセスが見える。

「このプロジェクトを続けるとしたら、次に何をするか」:プロジェクトへの理解度と、先を見る能力が見える。

「このプロジェクトでLLMを使った部分で、精度や品質の問題はあったか」:実装した人間として「LLMの限界と対処」を経験しているかが分かる。


ポートフォリオがない場合の評価

ポートフォリオが少ない、またはない候補者は一律に評価を下げない。

特に業務でAIツールを使っている場合、成果物がGitHubに公開できないことがある(業務の秘密保持、社内ツールなど)。

その場合の代替:

  • 業務でどんなAIツールを使い、どんな問題を解いたかを面接で詳しく聞く
  • テイクホームアサインメントで能力を確認する

ポートフォリオは判断材料の一つであって、人を測る物差しそのものではない。GitHubの見栄えで弾く前に、その人が実際の現場で何を動かしてきたかへ手を伸ばす。採用は、見栄えのいい一人を上に持ち上げる作業じゃない。動かせる一人を、現場の隣に迎える作業だ。


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