「AIで書いたか」を見抜こうとするほど、採用は弱くなる。問うべきは、AIに書かれたくらいで崩れる評価設計のほうだ。
AIが書いた職務経歴書をどう扱うか:見抜くことより先に考えること
面接の3分目。職務経歴書の「5名のチームをリードした」について「その時、最初に動かしたのは誰でしたか」と訊くと、候補者の言葉が止まる。書類は完璧なのに、本人がそこにいない。
これが、AIで職務経歴書を書く時代の採用現場の実像だ。「AIで書いたかどうか見抜けるか」と身構える前に、先に考えるべきことがある。
「見抜く」ことへの疑問
AI生成文を検出するツールはあるが、精度は完全でなく、誤検出も起きる。だが仮に100%見抜けたとして、その先に何があるだろう。
「AIで文体を整えたが、自分の経験を正確に伝えた候補者」と「全部自分で書いたが、中身が薄い候補者」。採用すべきはどちらか——この問いに「前者」と即答できるなら、見抜くための労力はほぼ無駄になる。
評価すべきは「誰が書いたか」ではなく「何が書かれ、本人がそれを語れるか」だ。
AIが書いた場合に問題になること
顧問先の採用を横で見ていて、AI生成で実際に火種になるのは次の3つだ。
書かれた内容が実態とズレる:「5名をリードした」とあるが、実際は小さなチームに短期間いただけ、という誇張。ただしこれはAIの問題ではない。手書きの履歴書でも昔から起きていた、内容の正確性の問題だ。
全員の文体が似てくる:AIは「良い職務経歴書のパターン」を学習しているので、書類が金太郎飴になる。個人の輪郭が溶ける。これはAI特有の、新しい困りごとだ。
面接で本人がついてこられない:書類を深掘りすると「そこはAIが書いたので…」と崩れる。書類と本人が地続きになっていない状態だ。
採用側が変えるべき設計
AIに書かれて困る書類は、もともと弱い書類だった。AIを前提に設計を組み替えれば、AI問題は副産物として消える。
設問を「経歴」から「判断」に変える。月曜から差し替えられる一文を置いておく:
直近で最も難しかった意思決定を1つ挙げ、(1)何を選び (2)何を捨て (3)結果どうなったか を書いてください。
職歴の羅列はAIが最も得意とするところだ。だが「あなたが実際に何を捨てたか」は、本人の中にしか答えがない。AIは文体を整える相棒にはなれても、起きていない経験そのものは作れない。
書類より先に小さな実技を置く:テイクホームの小課題や15分の対話確認をフローの前段に出す。書類は補助線に格下げする。
面接は「なぜ」を3回重ねる:「その判断の根拠は」「他にどの選択肢が」「なぜそれを捨てたか」。3回潜れば、本人の経験か借り物かは自然と表に出る。
AIを使って書くことへのスタンス
逆の見方もある。AIを相棒に自分の経験を的確に言語化できたこと自体は、むしろ歓迎していい。
メールをAIで読みやすく整えるのと同じで、職務経歴書をAIと一緒に磨くのは、業務でAIを使いこなす力の証だ。「AIを使って成果を出せる人材」が欲しいなら、「AIと組んで自己PRを書ける人材」はその入口に立っている。
問われるのは最初から一つ。「書かれた内容が実態を映しているか」、そして「本人がその言葉を、自分の声で語れるか」。それだけだ。
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