AIは採用基準の「なんとなく」を問い詰めてくれる道具だった。

採用基準をAIと一緒に言語化した3ヶ月

思考版1 本人執筆

採用の現場で一番難しいのは、スキルチェックでも面接設計でもない。「どんな人が欲しいか」を言葉にすることだ。

「コミュニケーション能力が高い人」「地頭がいい人」——採用担当者がよく言うこの言葉は、現場に入ると実はほとんど意味をなさない。面接官によって解釈がバラバラで、同じ候補者を「コミュニケーション能力が高い」と言う人と「話し方が一方的」と言う人が共存する。

なぜ言語化できないのか

採用基準が言葉にならない理由は、その判断が長年の経験から来ているからだ。「この人は合う」という感覚は正しいことが多い。でも、それを言葉にしようとすると途端に陳腐になる。

3ヶ月前、ある組織の採用設計をリセットする機会があった。既存の採用基準を見直すところから始めたのだが、会議で出てくる言葉はどれも抽象的だった。「主体性がある人」「成長意欲が高い人」——これでは面接官ごとに評価が変わる。

AIを壁打ち相手に使った

試したのは、採用基準の言語化にAIを使うことだった。やり方はシンプルで、「過去に採用してよかった人」「採用したが早期離職した人」のエピソードを話し、AIに問い返してもらう。

最初は「その人の何がよかったんですか?」という質問が返ってくる。「自走できていた」と言うと、「自走できているとはどういう状態ですか、具体的には何をしていましたか?」と返ってくる。

この繰り返しが効いた。

人間同士の会議だと「そうですよね、自走できる人ですよね」と流れてしまうところを、AIは何度でも「具体的には?」と聞いてくる。批判や評価をしないから、話している方も防衛せずに掘り下げられる。

出てきたのは「判断の文脈」だった

3回ほど繰り返すと、「自走できる」が「上司に確認せず動ける」から「そもそも何を確認すべきかを自分で判断できる」に変わった。さらに掘ると、「この組織では意思決定の根拠が曖昧な場面が多いため、不完全な情報の中で動ける人が合っている」という文脈が出てきた。

これは会議では出てこなかった言葉だ。AIが引き出したというよりも、AIに向けて話すことで自分たちが気づいた、という感覚に近い。

使えると感じた点、使えないと感じた点

使えると感じた点

  • 「なんとなく」を問い詰める圧力がちょうどよい。人間だと気まずくなる場面でも続けられる
  • 同じ質問を別の担当者にも投げてみると、採用基準の「ズレ」を可視化できた
  • 出てきた言葉を整理して文書に起こすとき、AIに構造化してもらうと早い

使えないと感じた点

  • AIは「その人のどこが好きか」という感情的な部分を引き出すのが苦手。情緒的な理由を言葉にするには人間同士の対話の方がいい
  • 組織固有の文脈(過去の失敗や組織の地雷)はこちらが詳しく説明しないと的外れになる
  • 言語化した基準が「正しいかどうか」の検証は別途必要。AIはそこは判断してくれない

今、何を言語化しているか

この方法を続けて3ヶ月、採用基準の文書は4バージョンを経た。最初は1ページだったのが今は3ページになり、面接官ごとのブレが明らかに減った。

採用基準の言語化は一度やれば終わりではない。組織が変わると必要な人材像も変わる。毎クォーター見直す習慣が今は定着してきた。

AIを使うと、その見直しの時間が半分になった。それが今の実感だ。

extra.faqs question = "採用基準の言語化にAIを使う場合、どのように始めればよいですか?" answer = "まず「過去に採用してよかった人のエピソード」を1-2件、具体的にAIに話してください。そこから「何がよかったのですか」「具体的にはどういう状態ですか」と聞き返してもらいます。抽象的な言葉(主体性、コミュニケーション能力)が出てきたら「その言葉を使わずに説明するとどうなりますか」と返してもらうよう最初に指示しておくと効果的です。"

extra.faqs question = "採用基準をAIで言語化した後、面接でどう使えばいいですか?" answer = "言語化した基準を「行動事実で確認できる質問」に変換することを勧めます。例えば「主体性がある=不完全な情報で動ける」という基準なら、面接では「情報が不足している状態で判断を求められた経験を教えてください」という質問に変換します。この変換もAIを使うと早いです。"