AIが書くJDが全部同じになるのは、AIのせいではなく、どの会社も同じ入力を渡しているからだ。良いJDを頼んでも、返ってくるのは平均的なJDだ。
採用JDをAIで書かせると全部同じになる問題と、そうならない書き方
「Webエンジニアの採用JDを作って」——AIにそう打てば、2分で1000字のJD(Job Description)が返ってくる。誤字もなく、体裁も整っている。一人で書けば半日かかる作業だ。優秀な相棒だと思う。
ところが、できあがったJDを他社のものと並べると、どれがどの会社か分からない。要件も、語り口も、ほとんど同じだ。
これはAIの限界ではない。渡している入力が、どの会社も同じだからだ。AIは入力の平均を返す相棒であって、あなたの会社の固有性は、入力に入れた分しか出てこない。
なぜAI生成のJDは均一になるか
AIは「Webエンジニアの採用JD」という指示に対して、学習データの中にある「良いWebエンジニアのJD」の平均的な特徴を出力する。
平均が出てくるということは:
- React / Node.js / AWSの経験
- チームワークができる
- 成長意欲がある
- 自走できる
これらは「どの会社のJDにも書いてある要件」の集合だ。
競合他社も同じプロンプトを使えば同じ出力になる。結果として、候補者から見ると全てのJDが同じに見える。
現場で起きる失敗:平均的なJDは、応募者も平均化させる
ありがちな失敗は、AIが出したJDをそのまま公募に出すことだ。応募は集まる。問題は中身だ。
集まるのは「とりあえず受けてみた」層が中心になる。面接に進めても、会社のことも仕事の中身も知らない。一方で、本当に欲しかった人——その仕事の難しさにこそ燃えるタイプ——は、JDから何も読み取れず、そもそも応募してこない。
JDが平均的だと、応募者も平均化する。母集団の質は、JDの固有性で決まる。面接で「他社と何が違うんですか」と候補者に聞かれて答えに詰まったら、それはJDが答えを書いていなかったということだ。
JDを差別化するために必要な入力
AIに固有性のあるJDを書いてもらうには、「この会社固有の情報」を入力に含める必要がある。AIが手を抜いているのではない。渡していない情報は、出てこないだけだ。
入力として必要な固有情報:
1. この仕事で最初の90日に起きること
「配属後は〇〇チームの一員として...」という一般的な書き方ではなく、具体的に何をするかを入力する。
良い例:「最初の2週間はコードレビューのみ。3週目から既存機能のバグ修正を担当。1ヶ月後にはスプリントの計画に参加する。3ヶ月後には自分で設計から実装まで担当する機能を持つ。」
2. この仕事が難しい理由
「やりがいのある仕事です」ではなく、実際に難しいことを書く。
良い例:「このポジションの難しさは、10年前のコードと最新のマイクロサービスが混在しているシステムを扱うことだ。既存コードの意図を理解しながら新しい設計を適用する判断力が必要になる。」
3. チームの意思決定スタイル
「フラットな組織」「オーナーシップを持って」という曖昧な表現ではなく、具体的な意思決定の仕方を書く。
良い例:「技術的な意思決定はエンジニアが行う。PdMはWHATを決め、エンジニアがHOWを決める。ただしデプロイの判断は先輩エンジニアのレビューが必要。」
4. この会社で活躍している人の具体的な行動
「コミュニケーション能力が高い人」ではなく、コミュニケーションの具体的な場面を書く。
良い例:「週次のスプリントレトロで、問題の原因と次の改善案を事前に考えてきて発言できる人。『動いているから問題ない』ではなく『なぜそうなっているか』を考え続ける人。」
AIへの入力を変える:プロンプト設計
上記の固有情報を揃えた上で、以下のプロンプト構造でAIに渡す。素材を出すのは人間、組み立てるのは相棒、という分担だ。
以下の情報を使って採用JDを作成してください。
【役割名】
シニアWebエンジニア
【最初の90日】
(具体的な内容を書く)
【この仕事が難しい理由】
(具体的な内容を書く)
【チームの意思決定スタイル】
(具体的な内容を書く)
【活躍している人の行動例】
(具体的な内容を書く)
【条件】
- 公募で候補者が読むことを前提に書く
- 「弊社は〜」という一般的な会社説明は含めない
- 応募条件は箇条書きにする
- 全体で600〜800字程度
このプロンプトで返ってくるJDは、固有情報が含まれているため他社と同じにならない。
AIと人間で、どこを分担するか
JD作成は、AIに丸投げするのでも、全部人間で抱え込むのでもない。固有情報は人間が出し、AIが構造と言葉に落とす。相棒として役割を分ける。
| パート | AI担当 | 人間担当 |
|---|---|---|
| 役割の背景説明 | ○ | △ |
| 最初の90日の内容 | × | ○(管理職が書く) |
| この仕事が難しい理由 | × | ○(現場エンジニアが書く) |
| 応募条件の言語化 | ○ | △ |
| 文章の整理・校正 | ○ | △ |
| 全体のトーン調整 | ○ | ○(最終確認) |
「この仕事が難しい理由」と「最初の90日の内容」は、現場で働いている人間にしか分からない情報だ。ここまでAIに肩代わりさせようとするから、JDが均一になる。相棒に渡すべきは、整える仕事であって、知らないことの捏造ではない。
JDの品質チェック:候補者目線で確認する
AIでJDを生成した後、以下の質問で確認する。
- 「なぜ他社ではなくここに応募するのか」が分かるか — 固有の仕事内容が書かれていなければ分からない
- 「自分がこの仕事に向いているか」が分かるか — 一般的な要件だけでは判断できない
- 「最初の1ヶ月でどう過ごすか」がイメージできるか — 「配属後は〜」だけでは具体的にならない
これらに「分からない」「できない」があれば、固有情報の追加入力が必要だ。
月曜からやれること: 次にJDを作る前に、現場の担当者に2問だけ聞く。「最初の90日で、新人は具体的に何をやる?」「この仕事の一番難しいところは?」。返ってきた答えを箇条書きのままAIに渡して、整えてもらう。これだけで、他社とは違うJDになる。固有情報を集める15分が、平均的なJDと差別化されたJDの分かれ目だ。
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