採れる面接官は「この人はうちに入って育つか」を見ている。採れない面接官は「この人は今の要件を満たすか」だけを見ている。
AI企業の採用で私が見てきた「採れる面接官」と「採れない面接官」の違い
AI企業の採用顧問として複数社の採用現場に入り、面接官として動きながら気づいたことがある。
採用成果(内定承諾率・入社後活躍率)に大きな差が出る面接官と、そうでない面接官の違いは、技術知識の深さでも経験年数でもない。
「採れる面接官」の共通パターン
1. 不合格の基準が明確で、合格の基準を持っていない
これは逆説的に聞こえるが、現場で観察していると確かにそうだ。
採れない面接官は「合格ライン」を持っている。「この技術スタックができれば合格」「前職の規模がXX以上なら合格」という基準だ。この基準は面接の途中で候補者に合わせて変わることが多い。
採れる面接官は逆で、「これがあれば落とす」という不合格の基準は明確だが、合格の基準はあえて緩くしている。「一緒に仕事したいと思えれば通す」くらいの感覚だ。
AI企業の採用で重要なのは、判断が難しいグレーゾーンの候補者をどう扱うかだ。高い能力を持ちながら「型にはまらない」人材は、合格の基準が明確な面接官には通らない。
2. 「できることリスト」より「できるようになった経緯」を聞く
採れない面接官の面接は、候補者のスキルリストの確認に終わる。「LLMの経験はありますか」「RAGは実装したことがありますか」という質問が続く。
採れる面接官は「なぜその技術を選んで学んだのか」「どういう失敗を経て今のやり方になったのか」を聞く。
AI分野は変化が速いため、今持っているスキルよりも「新しいものをどう習得するか」のパターンが重要だ。採れる面接官はこのパターンを見ている。
3. 自分が理解できない発言を「深掘り」する
採れない面接官は、自分が理解できない発言が出ると話題を変える。「なるほど、それは興味深いですね。ところで…」と次の質問に移る。
採れる面接官は「すみません、もう少し教えていただけますか」と止まれる。自分の理解が追いつかないことを恥ずかしがらない。
これが重要な理由は、AI分野の高度な技術を持つ候補者ほど、自分の専門領域について深く話す。この深い部分を引き出せるかどうかで、候補者の評価精度が大きく変わる。
「採れない面接官」のパターン
採用した後のことを考えていない
最も多いのはこれだ。面接の場で候補者を評価することに集中しすぎて、「この人が入社した後にどういう仕事をするか」をイメージしていない。
採れる面接官は面接中に「この人はどのプロジェクトに入れるか」「誰と組ませると活きるか」を考えている。だから的外れな質問が少なく、候補者も「自分のことを理解してもらえた」と感じる。
候補者に「落とされないための演技」をさせている
質問の仕方や面接の雰囲気によって、候補者は「正直に話す」か「落とされないために理想的な答えを言う」かを選ぶ。
採れない面接官の面接では候補者が演技をする。採れる面接官の面接では候補者が正直に話す。
採用ミスの多くは、候補者の演技を本当の姿だと判断してしまうことから起きる。
面接官を育てる際に使っている問い
採用顧問として、クライアントの面接官育成に関わる際に使っている問いがある。
「あなたは面接で何を見ているか」ではなく、「あなたは面接で何を見ていないか」を聞く。
見ていることを答えるのは簡単だ。見ていないことを言語化するのは難しく、そこに面接官の盲点が現れる。
採用に正解はないが、同じ採用条件で同じ候補者を面接しても、面接官によって合否の判断が大きく変わる現場を繰り返し見てきた。その差は面接技術ではなく、候補者を見る視点の違いから来ている。
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