採れる面接官は「この人はうちに入って育つか」を見ている。採れない面接官は「この人は今の要件を満たすか」だけを見ている。
AI企業の採用で私が見てきた「採れる面接官」と「採れない面接官」の違い
同じ求人票、同じ候補者、同じ45分。なのに、面接官が変わるだけで合否がひっくり返る。
AI企業の採用顧問として複数社の面接に同席し、自分でも面接官として動きながら、この差がどこから来るのかをずっと見てきた。
結論から言う。採用成果(内定承諾率・入社後活躍率)を分けるのは、技術知識の深さでも経験年数でもない。候補者の「どこを見ているか」だ。
「採れる面接官」の共通パターン
1. 不合格の基準が明確で、合格の基準を持っていない
これは逆説的に聞こえるが、現場で観察していると確かにそうだ。
採れない面接官は「合格ライン」を持っている。「この技術スタックができれば合格」「前職の規模がXX以上なら合格」という基準だ。この基準は面接の途中で候補者に合わせて変わることが多い。
採れる面接官は逆で、「これがあれば落とす」という不合格の基準は明確だが、合格の基準はあえて緩くしている。「一緒に仕事したいと思えれば通す」くらいの感覚だ。
AI企業の採用で勝負が決まるのは、判断が難しいグレーゾーンの候補者をどう扱うかだ。高い能力を持ちながら「型にはまらない」人材は、合格の基準が明確な面接官の網からこぼれ落ちる。そして、そういう人材ほど後から大きく伸びる。
月曜から試せること:面接の前に「この候補者を絶対に落とす理由」を3つだけ紙に書く。合格ラインは書かない。面接中はその3つに触れたかだけを確認し、触れなければ通す。グレーゾーンを「保留」でなく「通す」に倒せるようになる。
2. 「できることリスト」より「できるようになった経緯」を聞く
採れない面接官の面接は、候補者のスキルリストの確認に終わる。「LLMの経験はありますか」「RAGは実装したことがありますか」という質問が続く。
採れる面接官は「なぜその技術を選んで学んだのか」「どういう失敗を経て今のやり方になったのか」を聞く。
AI分野は半年で前提が変わる。今持っているスキルの一覧より、「半年前は知らなかったことを、どう自力で掴みにいったか」のほうが、入社後の戦力を正確に予測する。採れる面接官はそこを見ている。
月曜から試せること:技術名を一つ選んで「それ、最初にどこで詰まりました?」と聞く。スラスラ説明できる候補者ほど、自分で手を動かして越えてきている。逆に詰まった記憶がない人は、たいてい横で誰かがやったのを見ていただけだ。
3. 自分が理解できない発言を「深掘り」する
採れない面接官は、自分が理解できない発言が出ると話題を変える。「なるほど、それは興味深いですね。ところで…」と次の質問に移る。
採れる面接官は「すみません、もう少し教えていただけますか」と止まれる。自分の理解が追いつかないことを恥ずかしがらない。
これが効く理由は単純だ。AI分野の本物ほど、自分の専門領域に入ると一気に密度が上がる。その密度の高い数分を引き出せたかどうかで、評価の精度はまるで変わる。「わからないので教えてください」と素直に止まれる面接官の前でだけ、候補者は本当のギアに入る。
ここはAIを相棒にできる。面接の録画や文字起こしを相棒に渡し、「自分が話題を変えてしまった瞬間」を拾ってもらう。深掘りできたはずの場所が、面接ごとに自分の盲点として浮かび上がる。AIに判定を肩代わりさせるのではなく、自分の癖を映す鏡として横に置く使い方だ。
「採れない面接官」のパターン
採用した後のことを考えていない
最も多いのはこれだ。面接の場で候補者を評価することに集中しすぎて、「この人が入社した後にどういう仕事をするか」をイメージしていない。
採れる面接官は面接中に「この人はどのプロジェクトに入れるか」「誰と組ませると活きるか」を考えている。だから的外れな質問が少なく、候補者も「自分のことを理解してもらえた」と感じる。
候補者に「落とされないための演技」をさせている
質問の仕方や面接の雰囲気によって、候補者は「正直に話す」か「落とされないために理想的な答えを言う」かを選ぶ。
採れない面接官の面接では候補者が演技をする。採れる面接官の面接では候補者が正直に話す。
採用ミスの多くは、候補者の演技を本当の姿だと判断してしまうことから起きる。
面接官を育てる際に使っている問い
採用顧問として、クライアントの面接官育成に関わる際に使っている問いがある。
「あなたは面接で何を見ているか」ではなく、「あなたは面接で何を見ていないか」を聞く。
見ていることを答えるのは簡単だ。見ていないことを言語化するのは難しく、そこに面接官の盲点が現れる。これを面接前の自分にも向けると、評価の偏りが先に見える。
月曜の面接前に、自分にこの5問を当ててみてほしい。一つでも「考えていなかった」があれば、それが今日の盲点だ。
- この候補者を落とす理由を3つ言えるか(合格ラインでなく不合格ライン)
- 「できる」ではなく「できるようになった経緯」を聞く質問を用意したか
- 自分が理解できない話が出たら止まると決めているか
- この人が入社したらどのチームで・誰と組むか、像が浮かんでいるか
- いま自分が見ていない軸は何か(年齢・話し方・経歴の派手さに引きずられていないか)
採用に正解はない。それでも、同じ条件で同じ候補者を見ても、面接官次第で合否がひっくり返る現場を何度も見てきた。差は面接技術ではなく、見る視点だ。視点は、今日の面接から変えられる。
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