LLMが使えるエンジニアが欲しいという採用要件は、LLMを使いこなす技術とソフトウェアエンジニアリングの基礎の、どちらを優先するかを明確にしないと機能しない。
「LLMが使えるエンジニア」と「ソフトウェアエンジニアリングができるエンジニア」は別の能力だ
「AI時代のエンジニア採用では、LLMを使いこなせる人材を採用する」という方針を立てる企業が増えている。
しかしこの方針は、2つの異なる能力を混同している場合が多い。
2つの能力の違い
能力A:LLMの使い方の知識
- OpenAI APIやAnthropic APIの使い方を知っている
- プロンプトエンジニアリングの基本を知っている
- RAGの概念を理解している
- 主要なLLMモデルの特性の違いを知っている
この能力は、6ヶ月〜1年の実務経験と独学で習得できる。ソフトウェアエンジニアリングのバックグラウンドがなくても、この知識は持てる。
能力B:ソフトウェアエンジニアリングの基礎
- コードの保守性を考慮した設計ができる
- テストを書いてコードの品質を担保できる
- 本番環境でのデバッグと問題特定ができる
- チームでのコード開発の経験がある
この能力は、数年の実務経験が必要で、LLMの知識とは独立して存在する。
なぜ混同されるか
採用担当者からの求人要件に「ChatGPTやLLMを使って開発した経験がある方」と書くと、「LLMを使ったことがある」人が集まる。
しかし採用担当者が本当に求めているのは、多くの場合「LLMを使いながら、本番環境で動くシステムを作り、チームで保守できるエンジニア」だ。
LLMの知識とソフトウェアエンジニアリングの基礎の両方が必要だが、求人要件と面接設計が「LLMの知識」だけを確認する形になっていることがある。
どちらを優先するかはポジションによる
LLMの使い方を優先するケース
- AIプロダクトの初期プロトタイプを速く作りたい
- PoC段階で何が動くかを試したい
- プロダクトの技術的な負債が少なく、後でリファクタリングできる余裕がある
この場合、ソフトウェアエンジニアリングの基礎よりLLMの知識と実験速度を優先する。
ソフトウェアエンジニアリングを優先するケース
- 本番環境で長期的に保守されるシステムを作る
- チームで並行して開発する
- 既存のコードベースにLLM機能を追加する
この場合、LLMの知識は後からでも習得できるが、ソフトウェアエンジニアリングの基礎は時間がかかる。
採用面接での判断方法
LLMの知識を確認する問い:
- 「LLMのAPIを使って何を作りましたか。そのシステムのコスト設計はどうしましたか」
- 「プロンプトが変わった時、既存のシステムにどう影響しますか」
ソフトウェアエンジニアリングの基礎を確認する問い:
- 「書いたコードのテストをどう書きますか。LLMを使った部分のテストは特に難しいですが、どう対応しますか」
- 「本番環境でバグが出た時、どう特定して修正しますか」
両方を確認する面接設計にすることで、「LLMの知識はあるがエンジニアリング経験が浅い」という候補者と「エンジニアリングの基礎は強いがLLMは学習中」という候補者を、ポジションに合わせて評価できる。
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