People Analyticsは専門チームを作らなくても、既存のスプレッドシートと在席データから始められる。
People Analyticsの始め方:HR担当者がデータ分析を内製する5つの入口
「データドリブンな人事をやりたい」と言いながら、「でもウチには専門のデータサイエンティストがいない」で止まっているHRチームは多い。
People Analyticsは専門チームがなくても始められる。HR担当者が自分のデータで始める5つの入口を整理する。
入口1:離職データから始める
最も即効性があるのは、退職した人のデータを遡ることだ。
集めるデータ:
- 入社日・退社日・在籍期間
- 所属部門・ポジション
- 退職理由(記録がある場合)
- 退職時の評価スコア(直近1〜2回分)
最初の分析:
- 部門別の平均在籍期間
- 在籍期間別の退職理由の分布
- 「入社○ヶ月以内の早期退職」が多い部門・ポジション
この3つだけで「どの部門で早期離職が多いか」「入社後○ヶ月が離職ピーク」という実用的な発見が出ることが多い。
注意: 個人を特定できる形では扱わない。部門・ポジション・在籍期間の集計として扱う。
入口2:採用データから始める
採用は「人事が最も記録を持っている業務」だ。
集めるデータ:
- 応募経路(媒体/エージェント/リファラル)
- 応募から採用までの日数
- 選考通過率(各ステージ)
- 採用した人の現在のパフォーマンス(評価スコア)
最初の分析:
- 採用経路別の内定承諾率
- 採用に最も時間がかかっているポジション・ステージ
- 「採用経路」と「入社後の早期退職率」の相関
「リファラル採用は定着率が高い」「このポジションの一次面接通過率が極端に低い(評価基準が不明確)」などの発見が出やすい。
入口3:勤怠データから始める
勤怠データは多くの企業が電子化しており、加工しやすい。
集めるデータ:
- 部門別の平均残業時間(月次)
- 有給取得率(部門別・個人別)
- 欠勤率の推移
最初の分析:
- 残業時間が増加している部門の特定
- 有給取得率が低い部門の特定
- 「残業時間が急増した翌月」に離職が増えているかの確認
勤怠データは「組織の負荷状態」を見る指標として機能する。ただし「残業が多い=悪い」という単純な解釈は避ける。繁忙期の構造的な問題と、マネジメント問題による残業は原因が異なる。
入口4:研修・育成データから始める
集めるデータ:
- 研修受講率(部門別・ポジション別)
- 入社後のオンボーディング完了率
- 資格取得・スキル習得の記録
最初の分析:
- 研修受講率が低い部門の特定(参加しにくい理由を探る)
- オンボーディング未完了者の、3ヶ月後の定着率
- 育成プログラムへの参加と、評価スコアの相関
研修データは「組織が人材育成にどれくらい投資しているか」と「その投資が機能しているか」を見る入口になる。
入口5:エンゲージメントサーベイから始める
定期的なサーベイを実施している企業なら、時系列データが蓄積している。
最初の分析:
- 設問別スコアの部門差
- スコアの時系列変化(改善/悪化している部門)
- 「エンゲージメントスコアが下がった翌四半期」の離職率変化
エンゲージメントサーベイのデータは「問題が顕在化する前の先行指標」として機能する可能性がある。スコアと離職の相関が確認できれば、早期に介入できる。
AIを使った分析の加速
各入口のデータをCSVに落とし、ChatGPT/Claudeに渡すことで、データエンジニアなしでも次のことができる。
Excelでは難しい集計をAIに依頼する:
このCSV(採用データ)から、採用経路別の「入社後6ヶ月定着率」を計算してください。
「経路」「内定数」「6ヶ月在籍数」「定着率」の表にしてください。
パターンを発見させる:
このデータで、離職と相関しているカラムを教えてください。
数値が高い/低い場合に離職率が変わっているものがあれば、具体的に教えてください。
経営層向けサマリーを作る:
この分析結果を、経営会議向けの1ページサマリーに変換してください。
数字の解釈と、次のアクション案を含めてください。
AIは「分析の下準備」と「結果の文章化」を高速化する。ただし解釈の最終判断は、組織の文脈を知る人間が行う。
始める前の注意事項
個人情報の取り扱い: 分析は「個人を特定しない集計データ」で行う。特定の個人のデータを解析する場合、就業規則・プライバシーポリシーで許容されているか確認する。
データの品質を過信しない: HR系のデータは入力漏れ・入力ミスが多い。「データにそう書いてある」と「実態がそうだ」は別の話。数値の背景を知る担当者と確認しながら解釈する。
相関と因果を混同しない: 「評価スコアが低い人が離職している」は相関であり、「評価スコアを上げれば離職が止まる」という因果ではない。データは仮説の起点であり、答えではない。
People Analyticsの具体的な分析設計について相談したい場合は kenny@atsume.io まで。
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